
■企画概要
横浜に伝わる数々の”声なき声”を新たに拾い集め、モノオペラ『あかいくつをさがして』を新制作。冒頭では八村義夫作曲『一息ごとに一時間』を演奏し、物語の序曲に位置付けます。退廃的な臭気が漂う現代で、童謡『あかいくつ』、「ハマのメリーさん」等を追憶し、忘れ去られゆく人や街を考察するきっかけとします。この作品を、待ち続ける、全ての人々に捧げます。
■コメント
横浜、紅葉坂。この場所で企画し、演奏、創作をするというのはいかなることなのかを考え続け、この構想に辿り着いた。未知なる企画に手を差し伸べてくださった選考委員の先生方、音楽堂の皆様に深く感謝尽きない。横浜という街を愛する皆様と、その思いを分かち合うことができる作品を作るべく、奔走したい。
「音楽の可能性を拡げ続ける情熱の人」(野本洋介氏/BJ2025年12月号)
多角的に音楽を見つめ続ける打楽器奏者。作曲家としても演奏家の視座を持つ「見通しの良い音楽」(北爪道夫氏)創りに定評がある。
Photo ©︎Shoichi YABUTA
■企画概要
10万年前の“楽器の起源”と10万年後の“楽器の進化”の瞬間に、コントラバスを介してタイムトラベルする作品。
徳武史弥《10万年前のコントラバス》では、AIが画像生成した架空の楽器を実際に制作し、古のコントラバス誕生神話を音で描きます。また、川島素晴《10万年後のコントラバス》では、廃材となったコントラバスのパーツを再構成し、新たな楽器を創造する過程を辿ります。
■コメント
現在のコントラバスが「異化」された姿 ―― 過去や未来、環境により”原種”が大きく変容するイメージで楽器を再現したく企画しました。そのために日本情緒の継承者として歴史的・社会的現象を様々な手法で切り出す徳武史弥、そして既成概念を軽やかに裏返す現代音楽界のトリックスターである川島素晴は、この変容した楽器を音に変える上で最適な作曲家です。過去と未来、2つの時代におけるコントラバスの誕生とその成立過程を、ぜひ会場で見届けていただきたいです。
北海道大学工学部卒業。某国立音大大学院修了。新作委嘱・初演の他、一人芝居『コントラバス』の主演やYoutubeでのコントラバスアニメ動画制作など、ソロや室内楽におけるコントラバスの可能性の開拓・確立のため、楽器演奏のみに囚われない漸進的な公演企画や活動を行っている。勝手に。

今回は長い議論の末に2つの企画を選んだ。この結論に至るまでにはかなりの紆余曲折があり、すんなりと決まったわけではないことを、まずは強調しておきたい。
「一息ごとに一時間、あかいくつをさがして」は、八村義夫作品の打楽器演奏に関しては期待できるものの、メインとなるモノオペラの制作にやや不安が残った。横浜という街の記憶をさまざまな形で呼び起こすというプランはきわめて興味深いのだが、「ハマのメリーさん」のように実在した人物は繊細に扱う必要があろうから、このあたりの意図をあらためて企画者に問い合わせながら、最終的な判断を下した。一方で「10万年前のコントラバス/10万年後のコントラバス」については、コンセプトがシンプルかつ独創的という意味で評価が高かったのだが、本当にコントラバス一本のみでステージを充実したものに出来るのかについては議論が分かれる部分もあった。つまりは両者ともに期待と同時に不安を抱えての採択となったわけで、今年度はワークインプログレスがこれまで以上に重要になってくる気がする。
残念ながら選ばれなかった企画にも面白いもの、魅力的なもの、斬新なものがいくつもあった。それらの大半は、ほんの少しだけ音源に魅力が感じられなかったり、ほんの少しだけ説明が足りなかったりしたため採択されなかったのだが、議論の展開次第ではいずれもチャンスがあった。再度の応募を期待している。

初めて選定企画委員として参加させていただきましたが、噂どおり、独創性に富んだ企画の数々に高揚感を覚えました。異なる要素を掛け合わせることで新規性を生み出すタイプの作品が多いのではないかと想像していましたが、実際には一つのテーマや問いを徹底的に掘り下げ、専門的かつマニアックな視点から構築された企画が多かったような印象です。表現の手法や問題意識の振れ幅も大きく、現代の表現が持つ可能性の広さを改めて実感する機会となりました。
「一息ごとに一時間、あかいくつをさがして」。
「あかいくつ」、ハマのメリーさん、根岸外国人墓地といった、横浜という都市に半ば風化しながら残り続けてきた歴史の断片で作るモノオペラ。輪郭が曖昧ながら知名度がある素材にどんな「新たな視点」を出すのか、様々な可能性を感じます。
「現代音楽=難解」という固定観念を、土地の記憶と人の声によって内側から更新してくれることに期待してます。「かつて奪われ、押し殺されてきた声」が主役なので、いかにフィールドワークで埋もれてきた歴史の断片が拾えるのか、気になります。
企画者と同世代なので、いっそう注目です。
「10万年前のコントラバス/10万年後のコントラバス」は、タイトルを見ただけの段階から気になってしかたがなかったです。近藤さんたった一人で作る、壮大かつ親密な世界。コントラバスに取り憑かれたかのような感じに惹かれます。
10万年前と10万年後という途方もない時間軸を持ち込みながら、その中心に極めて身体的で物質的な楽器・コントラバスを据えている面白さ。抽象的な時間論や未来論を説明として聞くのではなく、「木を削る」「分解されたパーツを組み替える」「音が鳴る/鳴らない」という具体的な行為を通して、「音とは何か」「楽器とは誰のものか」「人間はどこまで音を支配できるのか」といった根源的な問いに挑んでほしいです。理屈ではなく現場の出来事として突きつけてくることに期待しています。
完成した楽器が「正しい音」を出すかどうかではなく、「音が立ち上がってしまう瞬間」そのものに立ち会えることを楽しみにしてます。

今回は選定企画委員として参加させていただき、たいへん光栄です。自分自身も音楽家としてダンスや演劇などの舞台作品に関わってきた身として、これまでにない斬新なパフォーマンスとの出会いを楽しみにしています。
ご応募いただいたプランは、いずれも音楽という「定数」に、身体や空間や映像といったさまざまな「変数」をかけ合わせて、これまでにない「新しい解」を生み出そうとする意欲的な企画でした。とはいえ、その「変数」はじつに多彩で、選考には熟議を要しました。最終的には、単なるコンセプトの実現にとどまらず観客の心に響きそうかという芸術性の評価から、舞台上の設営や転換は可能か、想定通りの効果は得られそうか、といった現実的な判断も経て、作品が選出されました。
「一息ごとに一時間、あかいくつをさがして」
横浜という土地の歴史を取材する中から新たな物語を立ち上げ、現代にも通じる社会と個人の諸相を浮かび上がらせようという、骨太なテーマに注目しました。歌手一名のモノオペラですが、八重奏のアンサンブルや映像演出も含め、視覚的にも見応えのある大規模な作品になりそうで、上演が楽しみです。
「10万年前のコントラバス/10万年後のコントラバス」
今から10万年前と言えば人類が世界中に移動を始めた黎明期。その時代に、原初の楽器が次第にコントラバスへと進化していったとしたら?そして今から10万年後の遠い未来に、かつてコントラバスだった遺物の断片から再び未来の楽器が生まれていくとしたら?そんな壮大な思考実験をどのように音響化、視覚化していくのか。予想のつかないイメージの広がりに期待します。
神奈川県立音楽堂の企画公募プログラム「紅葉坂プロジェクト」は、プロの音楽家のみならず、また演奏家、作曲家、プロデューサーかを問わず、70年の歴史を持つ音楽堂を舞台に、広く音楽の未来を切り開こうとする企画案を公募するものです。
あなたの企画で、これまでの音楽の景色を変えてみませんか。
2025年10月1日(水)~2025年11月16日(日)必着
2025年12月20日(土)
2025年10月17日(金)
18:30開場 19:00開始 20:00終了予定
舞台スタッフ同席のもと、音楽堂の舞台機構について理解していただくよい機会です。ぜひ、ご参加ください。
<要事前申込>
※この説明会への参加は任意です。審査には影響しません。
〒220-0044 横浜市西区紅葉ケ丘9-2 神奈川県立音楽堂
紅葉坂プロジェクト 企画募集係
TEL: 045-263-2567(火~日:9:00~17:00)
神奈川県立音楽堂(指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団)